「雪がみたい」 ある日、宇宙空間のど真ん中で呟いた男がいた。 ハーロックという。 俺の親友である。 そして、このアルカディア号の艦長でもある。 「どうやって?ここら辺には四季のある星はおろか大気のある星だってないぜ」 「いや、なんとなくだが。でも見たい」 こいつは世間じゃいい男の代表格扱いらしいが、中身はこんなもんだ。 「どうにかならんか?トチロー?」 俺はお前のドラ○もんか? 甘え声でハーロックは俺に尋ねる。 俺は小さくため息をついた。 ガキなのだ。我侭なただのガキ。 しかし、世間はそれを知らない。 幸せなものだ。 「やはり、無理だよな・・・」 聞こえるか聞こえないかの小さな呟きと共に、何も言わない俺の前で、しゅんとなる。 幻覚か、垂れ下がった犬耳と尻尾まで見える気がする。 こうなれば俺の負けだ。仕方がない。 「3日待て」 だからっていきなり抱きつくな、うっとうしい!! 尻尾を振るな、尻尾を! しかしこうまで、満面の笑みを浮かべ、抱きつかれると仕方がないという気分になるあたり、俺はこいつに甘いのかもしれない、と少し思った。 「雪がみたい」 私は耳を疑った。 宇宙空間のど真ん中で、とんでもないことを言い出すものだ。 とんでもないことを言い出したのは、キャプテン・ハーロック。 それは、いくらなんでも無理だろう。 ここらの星には、四季はおろか大気があるところすらない。 それは、目の前の男たちだってわかっていることだ。 「どうやって?ここら辺には四季のある星はもちろん、大気のある星だってないぜ」 トチローが諭すようにいう。 「いや、なんとなくだが。でも見たい」 なんとなくで物事がうまくいったら世の中狂っている。 「どうにかならんか?トチロー?」 無表情で、それがまるで当たり前であるかのように、男は男に尋ねる。 尋ねられた男−トチロー−は小さくため息をついた。 しかし、その瞳は笑っている。 「3日待て」 トチローの答えに、ハーロックは無表情で抱きついた。 「ええい、鬱陶しい!」 トチローのほうがかなり小さいので、それは抱きつくというより押しつぶすというほうが近い。 しかし、本気で振り払おうとしていないあたりどうだろうか? どうやら、トチローがハーロックに甘いというのは間違いらしい。 訂正 『非常に』甘いのだろう。 私は、少し頭痛を感じた。 雪が見たくなった。 なんとなく。 見たくなったものは、仕方がない。 「雪がみたい」 俺は呟いた。 しかし、隣の親友には、しっかり聞こえていたらしい。 「どうやって?ここら辺には四季のある星はもちろん、大気のある星だってないぜ」 そんなことは知っている。 しかし、見たくなったんだから仕方がないじゃないか。 「いや、なんとなくだが。でも見たい。どうにかならんか?トチロー?」 トチローは、小さくため息をつく。 やはり無理だよな・・・ 「三日待て」 俺は、嬉しくなって抱きついた。 「ええい、鬱陶しい!」 そんなことを言っても、離してなんかやる気はない。 エメラルダスのため息が聞こえた。 かまうもんか、こいつは俺の親友だ。 3日後、アルカディア号の周辺に、宇宙空間なのにも関わらず、白い雪が降った。 しかし、船員たちは特に驚かなかった。 満足そうに笑うトチローと、その横で普段より幾分楽しそうな雰囲気のキャプテンと、右手を額にあて頭痛をこらえるエメラルダスを見て、『ああ、いつものことだ』と納得したためである。 それは、とある、普通の日の出来事。 |
トチローはハーロックには甘いのです。
そしてエメラルダスは苦労しているのです。
船員は慣れてしまったのです。
一応、ハーロック×トチローサイトのつもりなんですけどね・・・
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