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「このクソチビ!!」

「でかいからって威張ってんじゃねえぞ!このお子様が!!」



「「お前なんてだいっきらいだ!!」」







戯れ






「だからな〜、ヤッタラン〜」

飲みなれない酒、それもヤッタランの秘蔵の一杯を棚から持ち出し、必死になって止める自分の声に耳も貸さず勝手に飲み干したあげく、泥酔状態に陥った元上司、現同志あるトチローの旋毛を見ながらヤッタランは思わず嘆息した。

「何、ため息なんて・・・・ヒクッ・・・・・・ついてやがんだ・・・・・・ヒクッ」

酔っ払い特有のしゃっくりだ。
涼を求め、机の冷たい木製部分に頬を擦り付るトチローに苦笑いを浮かべつつ、少しでも楽になるようにとその背をさする。

「一体どうしましたねん」

ハーロックとトチローの意見が食い違い、言い争いになるなんていうことは良くあることだ。
トチローは技術者、ハーロックは戦士、互いに互いの畑が違いすぎる。
しかし、それでも何だかんだといって気の合う二人でもある。
ここまで言い争う喧嘩も珍しい。

「なあ、俺やっぱ間違ってんのかな」

ぽつりと呟くトチロー。
酒気を帯び紅潮したその顔が泣きたげに歪められる。
しかし、涙を零そうとはしない。

「疲れてはるんや。もう、寝えや」

彼を愛しい(かなしい)存在だと思うのはこういう瞬間だ。
泣きたいのに泣かない、泣けるのに泣けない。


(他人のためだったらいくらでも泣けはるのになあ)


不器用な人間なのだ。
かって心酔し、傾倒し、そして今でも敬愛する大山敏郎、トチローという男は。
決して自分のためには泣かない。泣けない。



「今更でっしゃろ、間違ってるなんて」



そして慰められることすらも望みはしないのだ。
哀れな男だと思う。



「あんさんはワイの知る限りにおいて最高の極悪人やねんで。今更どうしたい言いますねん」



トチローがやろうとしていることは、少なからず彼の大事な人間を、彼を大事に思う人間を傷つける。
彼を熱望する恋人を、彼を渇望する親友を。
誰よりも理解しながらも、彼はその歩みを止めることは無い。
それがトチローの望んだ生き方であり、生きる義なのだ。




「そうだよなあ」




トチローは自嘲の笑みを浮かべる。
トチローは疲れているのだ。
これでもか、これでもかと頑張り、前に向かって後ろを見ることなく走り、休むことを忘れたせいで。
そして優しいから己の道を迷い、戸惑い、彷徨っている。




トチローの逝く道には誰も連れてはいけない。






「俺、女に生まれればよかったよ」


彼はそれを知っている。

その惑う優しさこそが、残酷さに繋がることを知らないまま。




「なんでっしゃねん。いきなり」



知った上で、理解した上で連れてはいけないことを本気で悔やんでいる。
彼は重すぎる愛情に途方にくれながらも、必死で己の道を突き進もうとしている。





「そしたらヤッタランの嫁さんになったのに」



悲しんでいる。
愛情を切り捨てることができずに。
切り落とすことなしに。






「キャプテンが泣きまっせ」





なんて。





「やだよ、あんなガキ」




なんて。




「ワイやったらええんか?」





愚かで愛しい(かなしい)男だろう。









「ヤッタラン、いい男だもん。もうお嫁さんにしてくれたら裸エプロンでも、拘束プレイでもなんでもしてやるよ」

「ワイ、そんなマニアックな趣味ありゃしません」

「う〜ん、じゃ、俺ヤッタランの嫁さんになれないじゃん。生活能力皆無だし〜」

「あのなあ。トチローはん」

「俺、Hくらいしか甲斐性ないし〜」




だからこそ、今この瞬間ぐらいは逃げ場所になってやってもいい。
そう思う。




「そんなんなくても、トチローはんなら、いつでもお嫁にしたげます」




トチローは一瞬目を丸くすると、腹を抱えて笑った。






「なんや、本気やのに」

目尻に伝う涙をみて少し安心する。

「いや、お前、俺のためにハーロックとエメラルダス敵に回してくれるんだ」

それが、自分の身勝手な思い上がりだとしても。

「そやで〜、でもワイあんま腕に自信ないからな〜、どないしまひょ、奥さん」

自分の前では決して泣かないことを知っているけれども。

「奥さん、奥さんなんだ、俺」

それでも涙を流す彼に安心する自分のエゴ。

「そりゃ、そうでっしゃろ。嫁さんにしてくれいうたんはあんさんでっせ」

逃げ場所にくらいはなれるから。

「そうだった、そうだった。では旦那様、どうしましょうか?」

決して現実からは逃れることができないことぐらい、解っている。

「頑張って逃げる方法、探しましょ」





真実は辛すぎるから、悲しすぎるから。
目をそむける瞬間があったっていい。




「愛してまっせ。奥さん」




「いや〜ん、トシ子も愛してる〜」







そうして優しい夢を見て。
希望と戦うための力を得ればいい。











それが愚かで哀しい戯れだとしても。

















「で、どうしていきなりお前とトチローの結婚話にまで話が飛躍してるんだ」

「あんまり気にしたらあきまへん」

「あのなあ」

「トチローはんが起きまっせ」

「・・・・・・・・・・」

「なかなか可愛いお人ですなあ、トチローはん」

「なっ!やらんぞ!!」

「誰もあんさんのものじゃないでっしゃろ。キャプテン」

「・・・・・・・・・・・・・」

「謝りに来たんやったら、しっかり謝りや。このことですねたらあかんで。あんまりうかうかしてると、トチローはん貰いますからな」

「ヤッタラン!!!」

「しーっ!起きますやろ」





まあ、ほんの蛇足。



書きたかったもの。
トチロー&ヤッタランのラブラブ会話。



・・・・・・・・・・・・・・・目的は果たしましたぜ、ママン(←誰や!!)
まあ、スランプ復帰第一作品なので許してください。


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