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「『トチロー』」

ただ、偶然かもしれなかったあの瞬間、出会ったのは、そう、運命だったんだ。





『トチロー』





「ハーロック・・・・・それは何だ」
震える声で、問いかけるトチローに、俺は『トチロー』に顔を埋め答えた。
「『トチロー』だ。可愛いだろう」
ふわふわ、もこもこの『トチロー』は柔らかくて気持ちが良い。
「認めよう、可愛いな。確かに」
トチローがなんだか怖い表情を浮かべている。
何故だ?
「そうだろう」
睡眠不足なのだろうか?
顔色が悪い。
「どこで買ってきたんだ」
トチローはやはり疲れているのだろうか。
最近眠っているトチローをあまり見ない。
大丈夫だろうか?
「この前降りた惑星で。俺達は運命の出会いを果たしたんだ」
「そうか、運命の出会いか・・・・」
そう、俺と『トチロー』の出会いは運命だった。
この小さく円らな瞳と目が合った瞬間、俺は間違いなく運命を感じた。
ふわふわ、もこもこ。
ディスプレイに飾られた大きな『トチロー』
俺は迷わず、運命の女神の命じるままに、その店に足を踏み入れた。






「っていうか、なんでタヌキのぬいぐるみなんだよ!!」
「違う、タヌキではない。ト○ロだ!」
そう、『トチロー』はトト○である。
全長一メートルの大きな○トロの縫いぐるみである。
円らで、どこか眠そうで優しい瞳が、トチローに良く似ていて、俺は思わず玩具屋で見つけて買ってしまったのだ。
大きな『トチロー』は柔らかで暖かく、抱き枕に最適である。
ちなみに、布製の眼鏡と帽子は俺の手作りだ。
大きな布製の眼鏡と帽子は『トチロー』に良く似合っていて、我ながら良い仕事をしたと思う。
「知っているか、トチロー。ト○ロには、大トト○、中ト○ロ、小○トロがいてな・・・ちなみにこれは大トト○で・・・・」
「いや、それどうでもいいし」
「どうでもいいのか!」
「どっちかっていうと、なんで『ソレ』の名前が俺の名前なんだ!!」
「出会った瞬間、『トチロー』だと確信したんだ!」
「確信すんな!!」
トチローが本気で怖い。
何故だ?
でも、怒っているトチローはトチローで、なかなか可愛い。
「いや、もうお前が何をしようと驚かん。大の男が、特大ぬいぐるみに抱きついているという恐ろしい光景にも目を瞑ろう。でも、頼むから名前を変えてくれ!!」
「どうして?」
こんなに似合っていて、こんなにも可愛いのに?
「どうしても!!」
トチローが怖い。
完全にお怒りモードだ。
このモードのトチローに逆らうのはまずい。
「・・・・嫌だ」
しかし、これだけはどうしても譲れないだ。
こいつの名前は『トチロー』しかないんだから。
出会った瞬間確信したんだから。
こいつは『トチロー』なんだと。
「ハーロック」
トチローが静かな声で俺の名を言う。
完全に切れたらしい。
「もう、その抱き枕があるんなら一緒に寝なくていいんだな」
「いや、それは困る!!」
俺は本気で焦った。
『トチロー』も大事だが、抱き枕なトチローはもっと大事なのだ。
「じゃあ、捨てろ」
「嫌だ!」
だんだんトチローの声が怖くなる。
「せめて名前を改名しろ」
「嫌だ!!」
どちらも嫌だ!
俺はじっとトチローを見つめた。
じっと、じっと見つめた。
トチローの怒った顔が、だんだん厭きれた顔になり、そして最後に大きなため息をついた。
「あああああああ、もう分かった。分かったよ!そんな顔すんな。分かった、分かったから。でも頼むからそれはお前の自室だけにしてくれ。頼むから船橋に持ってくんな」
「駄目か?」
「駄目だ!!」
トチローの叫びに俺はしぶしぶ肯いた。
ここが妥協点のような気がしたからである。







「『トチロー』」
と、言うわけで俺の部屋には『トチロー』がいる。
本物がかまってくれない分、俺はこいつにかまい倒すのだ。



でも、きっと。
トチローは気づいてないのだ。


『トチロー』はあくまでトチローの代わりだということ。




「な、『トチロー』」











オマケその1
「あの、副長・・・、一緒に寝るって一体・・・・」
「知らんほうがいいこともあるねん。何も聞かんといて」
「はあ・・・・」





オマケ2
「ハーロック」
「なんだ、エメラルダス」
「この子、くれません?」
「嫌だ」
「それじゃあ、買い取らせてください」
「駄目だ」
「お金なら・・・・」
「駄目だ」
「ハーロック・・・」
「駄目だ!」
「ハーロック!!」
「駄目!!!」



「エメラルダス、ハーロック。お前ら、なんか俺に恨みあるんかい?」






・・・・・ごめんなさい。
いや、本当に。
微妙に『夢の中』と繋がっています。
微妙な19のお題より『01.ただ、偶然かもしれなかったあの瞬間』からです。

布製の眼鏡と帽子をハーロックが手作りしたとか、玩具屋にアノ髑髏の真っ黒服で入店したとか・・・・
突っ込みどころだらけですね(汗)

トチローってなんか『となりのトト○』に似てません?
いや、どっちかっていうとタヌキだと思いますが・・・。
・・・・ごめんなさい。

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