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毒りんごはいかがですか?



「エメラルダス、久しぶりだな」

「そうですか?」


甘い甘い毒りんご
食べたら確実に、あの世逝き



「相変わらずのようですね」

「ああ」

でも。
それは、この世の何よりも甘くて美味しい。



「敏郎」

「なんだ?」




甘い甘い毒りんご。
食べたら確実にあの世逝き。
でも、それは、この世の何よりも甘くて美味しいから。







敏郎、このまま貴方を殺してしまっても良いですか?



毒りんご









「今は駄目だ」
薄暗い路地裏で動けなくなったまま、それでも不敵に哂う男に私はため息をついた。
「残念ですね」

敏郎の周りには死体のなりそこないがごろごろ転がっている。
全て刀傷だ。
致命傷には至らない、それでも動けなくなるだけの傷。
転がる死体もどきのうめき声がひどく耳障りである。

「大体、さっさとケリをつけてしまえば、こんな傷を作るはめにもならなかったでしょうに」

私は目に見えて大きな傷から手早く処置をしていく。
出血こそ多いものの、致命傷と呼べる傷はない。

「まあ、いいじゃないか」
「あまり良くないです」

敏郎が殺さない気で挑んだ結果がこれだ。
かすり傷だって、増えれば死にいたる傷になるという事実が、彼には理解できないらしい。

「私が来なかったらどうするつもりだったのですか?」
「その時は、その時でまた考えるさ」

思わず血止めの包帯をきつく縛り上げてしまう。

「って痛いし!!」
「痛いのはがまんしてください」

多少は、こちらの身にもなって考えて欲しいと思うのはいけないことだろうか。

「しかし、応急手当上手くなったよな」
「いい実験台がここにいますから」
「オイオイ」

苦笑を浮かべる男を軽く睨み付けて、私は治療を終了する。

「相変わらず自分のことにはいい加減ですね」

敏郎は苦笑を浮かべたまま、包帯が巻かれた右腕をさする。

「まあ、たいしたことないし」
「そのうち、殺されますよ」
「それは困る」

敏郎は、薄暗い路地裏にはそぐわない穏やかな笑みを浮かべる。

「まだ死ぬ気はないんだ」
「だったら!」

「わかってるって」

本当に何もわかっていない。

私は座り込む敏郎の肩を抑えつけ、その唇に舌を差し入れる。
敏郎は一瞬驚いたようだったが、すぐに応じてくれた。




生々しい唾液の音がする。
甘い血の味が私の食欲を誘う。



甘い甘い毒りんご
食べたら確実に、あの世逝き




まだ消えない敏郎の血の臭いすら甘く感じてしまう。



でも。
それは、この世の何よりも甘くて美味しい。




このまま敏郎を喰べてしまえたらどんなに幸せだろう。
そうすれば。



「窒息させる気か?」
「血の味がしますね」



甘い甘い毒りんご。
食べたら確実にあの世逝き。
でも、それは、この世の何よりも甘くて美味しいから。






「それとも俺を喰う気か?」




きっと、私はその毒で永遠に甘い夢の中にいれる。




「いいですよね。それも」




毒りんごはいかがですか?





「喰っても甘くないぞ」




「私には何よりのご馳走ですよ」




「変な奴」

「お互い様」

「確かに」



お互い顔を見合わせて哂う。




食べたら確実にあの世逝き。
でも、それは、この世の何よりも甘くて美味しいから。






「もし、探し物が見つからなかったら貴方の亡骸ぐらいはくださいね」

「見つけるよ」

「でしょうね」




きっと、私はその毒で永遠に甘い夢の中にいれる。







エメラルダス×トチローですから!
エメラルダスが喰います。
トチローが喰われます。
そういうサイトです!

実はこそっと過去話だったりするのはお約束です。


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