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「後悔しているか?」
俺はトチローに尋ねた。
「何を?」



後悔





かって、男が一人死んだ。
俺にとっては、彼は敵だった。
誇り高い男だった。
敵という形で出会わなければ、友人になれていただろうと思うような。
そんな、誇り高く、己の信念に生き、そして死んでいった男だった。


しかし、俺は彼と戦い、そして彼を死に追いやった。

俺は決してその罪を忘れるつもりはない。



『お前が、殺した!』

降り立った惑星で、その少女に出会ったのは偶然だった。








市場が乱立し、威勢の良い掛け声が辺りに飛び交う商店街を抜け、裏道に足を踏み入れる。
ふと、殺気を感じた。


「伏せろ、ハーロック!」
トチローが、俺の右足をいきなり蹴り飛ばす。
勢い、俺はそのまま倒れる。
「いきなり何を!!」
起き上がろうとした俺の頭上を電子銃の光が突き抜けていく。
「なっ!」
トチローは腰の電子銃を抜きはらうと、銃撃のあった方向に迎撃をする。
しかし、光は見事にあさっての方向にずれ、廃墟の軒先を打ち壊す。

「ちっ!はずしたか。」
「トチロー、銃を抜くな、それでなくとも腕悪いんだから!!」
「じゃかましい!!!」
俺はトチローを蹴飛ばし、建物の陰に身を隠す。

両者無言の銃撃戦が続く。
トチローは刀の腕はともかく、銃の腕はお世辞にも上手いとは言いがたい。
下手に発砲させるとこちらが怪我しかねないので、俺がトチローを背後にかばい移動していた。
光は俺を狙い向かってくるが、あまりの障害物の多さになかなか狙いが定まらないらしく当たらない。
こちらはこちらでトチローを庇いながら移動しているため、時間だけが過ぎていく。

「うっとうしいわ!!」
先にじれたのはトチローだった。
トチローが小声で叫ぶ。
「俺がとりあえず姿を出す、相手はその瞬間に打ってくるはずだから、しっかり相手の眉間打ち抜きやがれ!」
「って、待て!!」
飛び出すトチローに銃撃が向かう。
光はトチローの頬を掠める。
トチローは、細かな傷を増やしながらも、器用に光を避け、決定的な致命傷を受けることなく、銃撃の方向に突進していく。
「あのっ、馬鹿やろうが!!!」

俺はトチローを間違って撃たないように気をつけながら、銃撃の方向を確認する。
そして、ようやく確認できた狙撃者は・・・・

「女!」

驚きのあまり、眉間を打ち抜くはずの光は、少女の肩に当たる。
主を失ったレーザー光をありとあらゆる方向に放ちながら、少女は倒れた。



「お前、なんでハーロック殺そうとしたんだ?」
まだ少女と表現して差し支えないあどけなさが残る容姿をした女にトチローは問いかけた。
少女は、本当にどこにでもいる一般人といった服装であり、そして何より賞金かせぎ特有の血のにおいが感じられなかった。
「貴方は私の○○○を殺した!!」
それは久方ぶりに聞いた懐かしい名前だった。
トチローが疑問そうに俺に視線を投げかける。
トチローは知らない相手だ。
「そうだな、俺は○○○という男を知っている。素晴らしい男だった」
「そんなこと貴方に言われたくない!!」
少女は涙を流し、叫ぶ。
「私のあの人を殺した!愛していたの!愛してたのよ!結婚するはずだった!」
少女の叫びに俺は驚きを隠しきれなかった。
トチローは静かに言う。
「だから、ハーロックを殺そうとしたのか?」
「そうよ!悪い!!」
トチローの分厚いめがねは、その表情を隠す。
静かな問いかけに、少女はおびえを見せる。
「アンタはここで俺に殺されても、文句は言えないんだぞ」
「言わないわよ!殺しなさいよ!!」


「そうか」


トチローは目にも留まらない速さで腰の刀を抜き、少女の首を刎ねる。

そんな幻覚を見た。


実際にはトチローの刀は少女の首の皮一枚を薄く切るに留まっている。


「ひっ・・・」

少女は息を飲みこんだ。







「見えたか?死ぬってのはこういうことなんだよ。人を殺そうと思うならば、それだけの覚悟はしてこい」








少女はトチローに罵声を浴びさせるだけ浴びさせると、そのまま逃げるようにして去っていった。
もう、彼女が銃をとることはないだろう。
トチローの静かな、しかし、激しい殺気を浴びされれ、壊れなかった奴を俺は知らない。
彼女は、これから、その殺気に人生を蝕まれるのだ。
何度も何度も、繰り替えす悪夢のように。
それは、あまりに哀れなことだと思った。





「後悔しているか?」
俺はトチローに尋ねた。
「何を?」



常のトチローならばあんなことはしない。
あんな哀れな女に対し、ここまでの馬鹿はしないはずである。
ただ、笑って見逃してやるのが、常のトチローだということを俺は知っていた。



「俺と友であるということ」


知っている。
彼が、誰よりも冷たくなる瞬間を。


「まさか」


トチローは薄く口元に笑みを浮かべる。
眼は見えない。


「後悔なんかするはずないだろ。俺が選んだことだ」


俺が彼に試されているということを、感じるのはこういう瞬間だ。


「お前のためなら、なんでもしてやるよ」



「お前は俺の夢だ」



彼は、誰のためでもなく、俺のために絶対零度の心を持つ。



「お前こそ、後悔するなよ」



彼と友であることを後悔なんてするはずがない。
彼の夢であるこをと後悔なんてするはずがない。


その重たすぎる思いに狂喜さえ覚える。



「トチロー、お前は俺の親友だよ」



お前が後悔しないなら、俺も後悔などは決してしない。




徹底的に俺を利用すればいい。













トチトーとハーロックの関係。
・・・これが基本ってすさんでますか?
でも、実はトチローなんだかんだいって甘いです。
結局、少女殺してないんですもん。
本人気づいてないけど、彼はハーロックより甘いです。
ハーロック一人なら、この少女、殺されたと思います。

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