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キスの痛み

トチローのキスは優しい。
だから時々ひどく悲しくなる。

トチローが頬の傷に手を触れた。
「痛いか?」
私は笑った。

貴方のキスの方が痛いと。


頬の傷を癒そうと思うならば、できないことはないのは知っている。
それは、今の進みすぎた科学力が可能にした現実。
でも。
だからこそ。
私はこの傷を治すことを拒む。

「そう、トチロー。この傷は嫌いですか?」
「いや、嫌いじゃないよ」
トチローは暖かな笑みを浮かべる。
少し照れたような、その笑みが私は好きだ。

「この傷は私の戒めだから」

戒めだから、治さない。
治せない。

「まあ、俺も人のこと言えないしな。傷だらけだよ」

知ってる。
トチローの身体は、その小さな体躯にあわず、傷が多い。
彼は、その傷の全ての由来を覚えていると、いつか言っていた。

それは、ひどく悲しいことだと思う。

私は、この傷の理由だけ覚えていればそれでいい。

「エメラルダスの戒めか…。そんなに自分を虐める必要はないと思うんだがね」

「そう?ならば、トチローが守ってくれますか?」

「えっ!いや、それは…!!」

私は笑った。

「そんなに焦らなくてもかまいません。誰も貴方に守って欲しいなんて謂わないですから」

焦るトチローが可笑しかった。

「そうやって困ってくれるだけで十分です」

トチローが思っている人を知っている。
譲れない存在だということを理解している。


私が、トチローに出会ったように、トチローは『彼』に出会ってしまった。

私は、全知全能なる神なんて存在は信じていない。
もし、いるとすれば、それが非常に性格が捻じ曲がった存在だろう。
少なくとも、人が想像するような、優しい存在ではない。

しかし、もし、本当に存在するならば。
私がトチローに出会えたこと、それだけは感謝してもいいと思っている。

「トチロー。好きです」

頬の傷は、トチローを守れなかった私の戒め。

そして、『彼』への牽制。

『彼』はそんなこと知りもしないでしょうけど。

「トチロー、好きです。本当に」

「俺も好きだよ、エメラルダス」

ああ、本当に貴方のキスは痛い。




エメラルダスは永遠の片思いです。
トチローはエメラルダスが好きだけど、どうしても譲れないものがあるからです。
まあ、そんなことは置いておいて(←こら)
エメラルダスとトチローはキスするとき、やっぱりエメラルダスがかがまないとできないと思うのですが、いかがでしょうか?
私としてはそれも有りなんですが・・・。


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