「ハーロック」 トチローのため息が聞こえた。 暖かいのだ。 柔らかいのだ。 だから仕方がない。 いい加減あきらめろ。 トチロー。 夢の中 |
「オイ!」 眠るのはキライだ。 時々、とても怖い夢を見る。 それは、周りに味方が誰もいない戦場だったり、血まみれの仲間だったり。 ・・・・・・マーヤの死だったりする。 動きたいのに動けない闇の中で。 息が出来なくなって、苦しくなって。 泣き出したくなって。 「オイ!ハーロック!!」 今日も、また夢を見る。 「オイ、オイってば。ハーロック!」 それは変わらない日常。 諦めてしまった日常。 「オイってば!」 なのに、今日は。 誰かの声がした。 俺を呼ぶ誰かの声がした。 「ハーロック!!」 暖かい、小さな手が俺の頬を叩く。 「ハーロック!!」 「・・・トチロー・・・・・・」 トチローだった。 「なんだ」 「なんだ、じゃない!何、うなされてるんだよ!」 俺は首を振る。 「お前には関係ない」 そう、関係ないことだ。 俺の悪夢は俺だけのものだ。 「じゃかましい!毎回、俺の安眠をしっかり妨害しやがって!もう、何日お前と航海してると思ってるんだ。何が関係ないだ!」 ぎゃあぎゃあと、文句を言うトチローだが、俺を見た瞬間、その表情を少し変えた。 トチローの怒鳴り声が、トーンを落とし、俺を気遣う柔らかな音になる。 「なんだ、傷が痛むのか?」 俺は、そんなに変な顔をしていたのだろうか? 「別に・・・なんでもない」 トチローの手が俺の髪をなぜる。 「怖い夢みたのか?」 それが、少し気持ちが良かった。 暖かかった。 だから。 「眠れないんだ」 ぎゅっと、目の前の小さな身体を抱きしめた。 「そっか・・・・」 そのまま抱き返してくれた腕が柔らかかった。 女の柔らかさではなかったけど。 まるで、子供や動物を抱いているような気がした。 ポンポンとトチローの手が俺の背を叩く。 「今日だけだからな」 「ああ」 その日は、久々にぐっすり眠れた。 それから数年たった。 俺はやはり変わらず悪夢を見る。 だけど・・・ 「ハーロック」 トチローのため息が聞こえた。 「なんだ」 俺は腕にぎゅっと力を込める。 暖かい。 「前から言ってるんだが、俺としてはこの状態は非常に不本意だ」 「俺は気に入ってる」 暖かいのだ。 柔らかいのだ。 だから仕方がない。 そう、特にこんな夢を見た後は。 「俺は男の抱き枕になる趣味はまったくないんだ」 うるさい。 「今日だけ・・・と前、言ったはずだよな」 「うるさい。俺は眠い」 「んじゃ、一人で寝やがれ!」 「いやだ」 いつもの掛け合い。 でも、俺は知っている。 「ああ、もう今日だけだからな!」 そうして、俺はまた穏やかな眠りを獲得する。 |
トチロー、抱き枕計画。
なんだかトチローって暖かそうな気がしません、ついでに柔らかそうな気が・・・(妄想)
ハーロックの抱き枕ですね。
マーヤさんは『我が青春のアルカディア』に出てこられたハーロックの恋人です。
いつか彼女についても書きたいと思うのですが、なかなか書けません。
ブラウザバックでお願いします。
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